日本人として今こそ味わいたい万葉集の魅力を、マンガを交えて楽しく紹介しました。全4,500首余りある万葉集の中から、愛の歌、四季と暮らしの歌、日本全国ゆかりの歌の3つのテーマにわけ、選りすぐりの名歌を150首以上収録しています。時代を越えて私たちの共感を呼ぶ、珠玉の歌にぜひふれてみませんか。
万葉を描く
万葉の風景 飛鳥・山の辺・奈良・吉野・近江・筑前
はじめに
もくじ
本書の見方
第一章 愛に生きる人の歌
『万葉集』は愛の歌集
【悲恋物語】
1 磐姫皇后
磐姫皇后/君が行き 日長くなりぬ 山たづね
かくばかり 恋ひつつあらずは 高山の
ありつつも 君をば待たむ 打ち靡く
秋の田の 穂の上に霧らふ 朝霞
2 但馬皇女・穂積皇子
但馬皇女/秋の田の 穂向の寄れる かた寄りに
後れ居て 恋ひつつあらずは 追ひ及かむ
人言を 繁み言痛み 己が世に
穂積皇子/降る雪は あはにな降りそ 吉隠の
3 狭野茅上娘子・中臣宅守
狭野茅上娘子/君が行く 道のながてを 繰り畳ね
中臣宅守/塵泥の 数にもあらぬ われ故に
額田王/あかねさす 紫野行き 標野行き
大海人皇子/紫草の にほへる妹を 憎くあらば
鏡王女/秋山の 樹の下隠り 逝く水の
天武天皇/わが里に 大雪降れり 大原の
藤原夫人/わが岡の 龗に言ひて 落らしめし
柿本人麻呂/秋山の 黄葉を茂み 迷ひぬる
去年見てし 秋の月夜は 照らせども
高市皇子/山振の 立ち儀ひたる 山清水
大伴旅人/世の中は 空しきものと 知る時し
吾妹子が 見し鞆の浦の むろの木は
大伴坂上郎女/佐保河の 小石ふみ渡り ぬばたまの
来むといふも 来ぬ時あるを 来じといふを
恋ひ恋ひて 逢へる時だに 愛しき
大伴家持/百年に 老舌出でて よよむとも
振仰けて 若月見れば 一目見し
笠女郎/相思はぬ 人を思ふは 大寺の
粟田女娘子/思ひ遣る すべの知らねば 片垸の
作者未詳/紫は 灰指すものそ 海石榴市の
たらちねの 母が呼ぶ名を 申さめど
うち日さす 宮道を人は 満ち行けど
眉根搔き 鼻ひ紐解け 待つらむか
言霊の 八十の衢に 夕占問ひ
朝寝髪 われは梳らじ 愛しき
鳰鳥の 葛飾早稲を 饗すとも
信濃なる 千曲の川の 細石も
【悲劇の皇子】
1 有間皇子
有間皇子/磐代の 浜松が枝を 引き結び
家にあれば 笥に盛る飯を 草枕
2 大津皇子・大伯皇女
大津皇子/ももづたふ 磐余の池に 鳴く鴨を
大伯皇女/うつそみの 人にあるわれや 明日よりは
万葉歌人系図
第二章 四季と暮らしの歌
『万葉集』×「百人一首」
四季/春
石ばしる 垂水の上の さ蕨の/志貴皇子
春の野に すみれ摘みにと 来しわれそ/山部赤人
あしひきの 山桜花 日並べて/山部赤人
春の野に 霞たなびき うら悲し/大伴家持
わが屋戸の いささ群竹 吹く風の/大伴家持
うらうらに 照れる春日に 雲雀あがり/大伴家持
夏
春過ぎて 夏来るらし 白栲の/持統天皇
霍公鳥 来鳴き響もす 卯の花の/石上堅魚
秋
秋風の 清けきゆふへ 天の川/作者未詳
秋の野に 咲きたる花を 指折り/山上憶良
萩の花 尾花葛花 瞿麦の花/山上憶良
夕されば 小倉の山に 鳴く鹿は/崗本天皇
経もなく 緯も定めず 少女らが/大津皇子
冬
新しき 年の始の 初春の/大伴家持
行事
吾妹子が 額に生ふる 双六の/安倍子祖父
わが園に 梅の花散る ひさかたの/大伴旅人
〈贈りもの〉
言問はぬ 樹にはありとも うるはしき/大伴旅人
衣食住/衣
紅は 移ろふものそ 橡の/大伴家持
針袋 帯び続けながら 里ごとに/大伴池主
食
験なき 物を思はずは 一坏の/大伴旅人
石麻呂に われ物申す 夏瘦に/大伴家持
醬酢に 蒜搗き合てて 鯛願ふ/長忌寸意吉麻呂
住
世間を 憂しとやさしと 思へども/山上憶良
風雑り 雨降る夜の 雨雑り/山上憶良
島の宮 上の池なる 放ち鳥/作者未詳
仕事
梅柳 過ぐらく惜しも 佐保の内に/作者未詳
勝鹿の 真間の井を見れば 立ち平し/高橋虫麻呂
稲舂けば 皹る吾が手を 今夜もか/作者未詳
志賀の海人は 藻刈り塩焼き 暇なみ/石川少郎
家族
憶良らは 今は罷らむ 子泣くらむ/山上憶良
稚ければ 道行き知らじ 幣は為む/作者未詳
布施置きて われは乞ひ禱む 欺かず/作者未詳
信濃道は 今の墾道 刈株に/作者未詳
父母が 頭かき撫で 幸くあれて/丈部稲麻呂
防人に 行くは誰が背と 問ふ人を/作者未詳
第三章 日本全国ゆかりの歌
万葉ゆかりの地めぐり
万葉地図
【三つの都の歌】
(1)飛鳥宮
采女の 袖吹きかへす 明日香風/志貴皇子
(2)藤原京
藤原の 大宮仕へ 生れつぐや/作者未詳
やすみしし わご大王 高照らす/作者未詳
(3)平城京
あをによし 寧楽の京師は 咲く花の/小野老
東北地方
天皇の 御代栄えむと 東なる/大伴家持
安積香山 影さへ見ゆる 山の井の/作者未詳
関東地方
多麻川に 曝す手作 さらさらに/作者未詳
妹が門 いや遠そきぬ 筑波山/作者未詳
東海地方
桜田へ 鶴鳴き渡る 年魚市潟/高市黒人
遠江 引佐細江の 澪標/作者未詳
くしろ着く 手節の崎に 今日もかも/柿本人麻呂
北陸・信越地方
馬並めて いざ打ち行かな 渋谿の/大伴家持
伊夜彦 おのれ神さび 青雲の/作者未詳
近畿地方
三香の原 久邇の京は 荒れにけり/田辺福麻呂歌集
難波人 葦火焚く屋の 煤してあれど/作者未詳
あさもよし 紀人羨しも 亦打山/調首淡海
大和地域
香具山と 耳梨山と あひし時/中大兄皇子
わたつみの 豊旗雲に 入日射し/中大兄皇子
見れど飽かぬ 吉野の河の 常滑の/柿本人麻呂
阿騎の野に 宿る旅人 打ち靡き/柿本人麻呂
中国・四国地方
飫宇の海の 河原の千鳥 汝が鳴けば/門部王
石見のや 高角山の 木の際より/柿本人麻呂
熟田津に 船乗りせむと 月待てば/額田王
九州地方
新羅へか 家にか帰る 壱岐の島/六鯖
神さぶる 荒津の崎に 寄する波/土師稲足
隼人の 薩摩の迫門を 雲居なす/長田王
●ワンポイント『万葉集』
万葉びとの恋と結婚
万葉びとの「四季観」
万葉時代の暦
正倉院宝物と『万葉集』
万葉びとの装い
万葉歌のなかの衣と食
万葉びとと「時刻」
浦島太郎伝説
「飛鳥」と「明日香」
平城京の風景
仏教と万葉歌
万葉歌留多
●万葉ヒストリー
壬申の乱
白村江の戦いと近江への遷都
万葉時代の海外交流
万葉仮名クイズ
『万葉集』Q&A
【万葉の代表歌人たち】
飛鳥時代 額田王
柿本人麻呂
高市黒人
奈良時代 山部赤人
山上憶良
大伴旅人
大伴坂上郎女
大伴家持
飛鳥・奈良時代 名前のわからない人々
万葉年表
キーワード索引