書籍詳細

図解 よくわかる思春期の発達障害

中山 和彦+小野 和哉:著

サイズ・頁数 B5変型判・144頁
ISBNコード 978-4-8163-5337-6
価格(税込) 1,540円
発行日 2012.11.13

内容紹介

本書は、発達障害の特性をわかりやすく解説し、思春期を迎えた本人、家族、教師それぞれの立場に応じた適切な対応のしかたをイラストとともにきめ細かに紹介しました。思春期に多い悩みとそれを乗り越えるためのヒントを豊富に掲載しています。進学・就職の選択肢や支援機関についても紹介しています。

目次

■巻頭「思春期の発達障害」理解度チェック



1章 発達障害について知っておきたいこと



1 発達障害の特性を理解しよう

「発達障害」は、成長過程で明らかになる障害の総称

自閉症とアスペルガー症候群は明確に区別できない

知的レベルが高い子どもほど発達障害に気づかれにくい

 

2 自閉症スペクトラムは3つの障害が特徴

診断基準にも用いられる三つ組の障害



3 不注意・多動性・衝動性が特徴のADHD(注意欠如多動性障害)

ADHDは3つのタイプに分けられる

多動性は年齢とともに落ち着いてくる

不注意が起こる原因には記憶機能がかかわっている



4 読み・書き・計算が苦手なLD(学習障害)

得意な領域と不得意な領域の差が極端に現れる

LDでよくみられる特性と考えられる要因



5 発達障害は重なって現れることが多い

診断名は医師によって異なる場合がある

重複している場合は困難さも増す



6 運動障害や感覚過敏をともなうことがある

複雑な動きが苦手な「運動障害」

五感にかたよりがある「感覚異常」

感覚統合の未発達が原因と考えられる



7 発達障害の特性は、性格やクセとは異なる

脳機能の発達のかたよりが行動や思考に影響する

神経伝達物質も一因とみられている

てんかんやチックをともなうことが多い



8 遺伝的要因と環境要因が関係している

遺伝子だけで発症する障害ではない

環境ホルモンが胎児の脳にダメージを与えることも

発達障害の原因は親の育て方とは無関係



column 知的能力が高いから障害が軽いとはいえない



 





2章 思春期に多い悩みと、乗り越えるためのヒント



(中学生) 自分はほかの人とどこか違うと感じる

思春期は人との違いを意識する時期

苦手なことを欠点と思わず、個性の一部ととらえる

苦手なことより得意なことに目を向ける



(中学生) グループ行動ができない

仲間に入れない理由は子どもにより異なる

自分では孤立する理由がなかなか理解できない

グループ行動がとれないことを必要以上に悩まない



(中学生) 友だちの話の輪に入れない

人の話は理解できても自分の考えをうまく話せない

一方的に話してしまい会話にならないタイプも

緊張せず話せるよう日ごろから練習を

話しかけるときは相手の状況をたずねる



(中学生) 毎日のように忘れ物をしてしまう

前日に用意していたものでも忘れてしまう

ワーキングメモリーの問題はメモでカバーする

約束事はメモをして必ずその場で確認する



(中学生) 同時に2つ以上のことができない

一度に複数の作業をやりこなすことが苦手

指示も一度に出されると頭が混乱してしまう

自分なりの工夫で情報をうまく処理する

指示は1つずつ出してもらう



(中学生) 身のまわりの整理整頓ができない

学校でも家庭でも物を整理できない

定期的に整理整頓をする時間をつくる

物を増やさずできるだけシンプルに



(中学生) 体育大会などの学校行事に参加するのが苦手

いつもと違う環境にうまく対応できない

事前にプログラムを頭に入れておく

感覚過敏の場合は刺激を上手に避ける



(中学生) ほかの生徒のルール違反が許せない

規則や習慣にこだわり、例外は認められない

なぜルール違反をするのかを考えてみることも必要

注意をする役目は自分ではないことを認識する



(中学生) 努力しても成績が上がらない

勉強で一度つまずくと、どんどん遅れていってしまう

必要に応じて家庭教師や塾を利用する 



(中学生)いじめがひどくなって学校に行くのが怖い

「不審者」と呼ばれて仲間はずれにされる

自分に自信をもてる子はいじめの加害者にはならない

安心できる友だち、安心できる場所を見つけよう



(高校生) 空気が読めないと言われる

冗談を本気に受け止め、トラブルになることがある

自分が思ったことをそのままことばにしてしまう

同じことばでもさまざまな意味があることを知る



(高校生) クラスの仲間からだまされることがある

お金を要求されて渡してしまう

友だちであってもお金の要求には応じない



(高校生) 友だちのつくり方がわからない

友だちが多い人をうらやましいと思う

友だちづくりを焦らない

自然体でいられる関係からスタート



(高校生)部活動がきびしいので退部したい

先輩後輩の関係に戸惑い挫折することも

社会性が養われ、心身がきたえられる

自分の適性を見極めるチャンス



(高校生)異性とのつきあい方がわからない

異性へのアプローチが一方的になりがち

交際に発展させるには心の通い合いが大切

理解してくれる人に相談してみる



(高校生)羞恥心や常識がないと言われる

羞恥心の発達が未熟な場合も

してはいけないことをルールとして覚える



(高校生)身だしなみに気を配ることが苦手

服装や身だしなみに無頓着な場合も

感覚過敏のために特定の素材にこだわる

洋服選びで迷うときはアドバイスしてもらう

特定の素材にこだわる場合はメーカーや販売店を把握しておく



(高校生)ときどき自分をコントロールできなくなる

思い通りにならないと感情のブレーキがきかなくなる

どんなときがキレやすいか自己分析する



column 過去の体験がよみがえるタイムスリップ現象









3章 医療機関ではこのような診察・ケアが行われている



1 発達障害が疑われたら相談先を見つける

医療機関を受診するなら思春期外来が望ましい

できるだけ発達障害にくわしい医師を選ぶ

各地の相談機関を利用する方法もある



2 発達障害の診察はこのように進められる

発達障害の診断には生育歴が大きな手がかりに

確定診断までには多少の日数を要する

診断名にこだわらず、子どもの状態に目を向ける



3 発達障害の検査には知能検査が用いられる

知能検査で得意・不得意分野が明らかになる

検査結果を読むときに気をつけたいこと



4 発達障害と同じような症状が現れる心の病

精神疾患の陰に発達障害が隠れてしまうケースが多い

思考や感情がまとまらない「統合失調症」

不安や恐怖が極端に強まる「不安障害」

心理的なストレスが身体に現れる「心身症」



5 発達障害にはこんな二次障害が起こりやすい

発達障害への対応が不十分だったために生じる「二次障害」



6 発達障害と行動障害の関係は?

大人に対して反抗的な態度をとる「反抗挑戦性障害」

反社会的な行動をする「素行障害」



7 日記療法で問題解決の糸口を探る

優れている面を伸ばして社会的自立を目指す

失敗したことを書き出して問題点を解決する「日記療法」



8 ADHDには薬物療法が用いられる

不注意や多動性・衝動性を抑える効果がある

薬によって脳内の情報伝達がスムーズに行われる





9 併存障害・二次障害に用いられる薬物療法

統合失調症には抗精神病薬

うつ病や不安障害には抗うつ薬・抗不安薬

心の病は薬物療法と並行して精神療法を行う



column 年齢によって使用される検査や薬が異なるものもある







4章 家族は気持ちをひとつにして支援していく



1 親の最大の役目はいつも味方でいること

味方がいれば子どもは困難に立ち向かっていける

家族全員が一貫性のある〝ブレない姿勢〟で支援する



2 本人が障害のあることを拒否する場合は

障害を認めたくない気持ちを理解する 

思春期の状態でその後の経過が予測できる



3 勉強に集中しやすいように環境調整をする

勉強に集中しやすい環境をつくる

物の置き場所をできるだけで変えない



4 予定を変更するときは必ず事前に伝える

物事に柔軟に対応できないという特性を理解する

事前予告をしてパニックを防ぐ

興味を示さないことに無理やり連れ出さない



5 暗黙のルールや常識はきちんと教える

「言われなくてもわかるはず」と決めつけない

公私の区別をつけられるようにする



6 自立に必要なライフスキルを身につけさせる

家事の手伝いを通して、自立心を養う

栄養バランスのよい食事で健康管理を

金銭感覚に不安がある場合は信頼できる人に管理してもらう



7 周囲の理解と支援で二次障害を防ぐ

プラスの側面を評価して自尊感情を高める

地域の人たちにも特性を理解してもらう



8 不登校が心配される場合は

不登校になった原因を安易に探ろうとしない

不登校が長期化した場合は学習の場を変えてみる



9 発達障害の問題をひとりで抱え込まない

支援する側にもサポーターは不可欠

学校の先生と信頼関係を築く



column 親の会などに参加して仲間をつくろう







5章 学校ではこのようにサポートしていく



1 学級担任だけでなく学校全体で支援する

校内委員会を設置し、教職員が連携して支援する

まず、発達障害児の実態を把握すること



2 生徒の特性に合わせた指導計画を作成する

短期的・長期的な目標を設定する

成功体験をもつ機会を増やす配慮が必要

発達障害のある生徒への配慮はクラス全員の成長にもつながる



3 支援員を配置する学校が増えている

通常学級に入って支援する「入り込み指導」

教師と支援員が連携して指導・支援に当たる

支援員は担任より長いつきあいになる



4 障害の状態に応じて通級指導を活用する

苦手な領域を改善する通級指導教室

通級指導を受けるかどうかは本人の意思を確認して決める



5 ほかの生徒や保護者に理解してもらうには

支援を受ける権利はどの生徒にもある

クレームをつけてくる保護者とは誠意をもって向き合う

保護者の支援は大きな力になる



6 親が子どもの障害を認めたがらない場合は

これまでの親の心労を思いやり、寄り添うつもりで接する

学校での子どもの困難な状況を理解してもらう



column 生涯を通じて支援する「個別の教育支援計画」





6章 進学・就職で後悔しないために



1 義務教育終了後の選択肢は幅が広い

簡単に決定しないで時間をかけて選択する

高校に進学する場合は事前に学校の特色をチェックする



2 大学生活では課題が多くなる

大学では自主性が強く求められる

大学生活で戸惑ったときは学生相談室を利用する

 

3 自己理解を深めて適職を見つける

自分の適職とは「長続きする仕事」

面接に臨むときは明るい表情を心がける



4 手帳制度を利用して就職する方法もある

障害のある人に交付される3種類の手帳

手帳を取得すると就労支援が受けられる



5 各種の就労支援機関を活用する

総合的な支援を行う発達障害者支援センター

就労に必要なスキルアップを応援する地域障害者職業センター

自立への道をバックアップする地域若者サポートステーション



6 ジョブコーチの支援を受けることもできる

発達障害の人の就労で多く利用されている

仕事が長続きしない人にとってジョブコーチは心強い味方



7 職場の人に理解してもらうために

自分の特性を伝えたほうが職場に適応しやすい

会社に理解してもらう自信がないときは医師に相談する

「配慮されて当然」という自己本位な考えはつつしむ



column 発達障害だったと考えられる偉人たち