書籍詳細

図解雑学シリーズ

よくわかるヒッグス粒子

広瀬 立成:著

サイズ・頁数 B6判・224頁
ISBNコード 978-4-8163-5307-9
価格(税込) 1,430円
発行日 2012.08.11

内容紹介

本書は、「ヒッグス粒子」の解説書です。本書では、前提となっている宇宙の成り立ちや、そのほかのさまざまな素粒子などの話からはじめて、LHCというヒッグス粒子を発見した施設のことまで、できるだけ、誰にでもわかるように、やさしい文章と豊富な図版を使って、解説しています。

目次

第1章 ヒッグス粒子とは何か

標準理論の泣き所--存在が仮定されていたヒッグス粒子

真空と質量に「なぜ」の目を向ける--その奥に潜むものは?

ニュートン力学を越えて--質量の起源を問う

真空はヒッグスの海である--ヒッグス粒子と質量の関係

唯一の仮説だったヒッグスメカニズム--標準理論を実証するために

ヒッグス粒子をたたき出す--ヒッグス粒子の観測方法

加速器とはどのような装置?--荷電粒子のエネルギーを高くする

大型ハドロン衝突型加速器(LHC)--ヒッグス粒子を発見した加速器

激突する素粒子--より高いエネルギーを発生させる

史上最大の実験がスタート--LHCの稼動と故障

ヒッグス粒子を発見--LHCの再稼動と歴史的瞬間

当たった予測、外れた予測--多くの学者が考察したエーテル

ファラデーの実験--力はどのように伝わるか

ファラデーからマクスウェルへ--電磁力の担い手はエーテル?

マイケルソンの挑戦--エーテルに対する地球の速度は?

エーテルは存在しなかった--マイケルソン-モーリーの実験へ



第2章 質量について考える

質量と重さはどう違う?--外的な量と内的な量

質量は2つある!?①--天秤で測る「重力質量」

質量は2つある!?②--もう1つの質量「慣性質量」

質量は2つある!?③--運動が伴うときは慣性質量が主役

2つの質量は一致するのか①--物体に働く力の向きは?

2つの質量は一致するのか②--エートベッシュらによる実験結果

アインシュタインの思考実験--2つの質量の一致は偶然なのか

特殊な理論から一般的な理論の構築へ--相対性理論を作り上げた手法

見かけの力、慣性力--観測者によって現れたり消えたり

重力と慣性力は別物か--宇宙船内と電車内は同じ?

等価原理の提唱--重力と慣性力は等しい

慣性力の正体を求めて--運動を妨げる「抵抗」なのか

一般相対性理論へ--真理は単純で美しい

等価原理が予測した重力の性質--光は曲がる?

一般相対性理論の実証--重力によってゆがむもの

はじめに質量ありきが前提--より根源的な問いかけへ

質量の起源の解明へ--鍵はヒッグス粒子の発見



第3章 素粒子と4つの力

物質とは何か--多くの先人が挑んだ命題

原子の構造を観測する方法--「見る」ための一般的な手法

原子核の発見と原子モデルの発表--原子の構造の解明へ

隙間だらけの原子--原子を構成する3種の素粒子

反粒子の発見とその性質--粒子と反粒子の違いは?

陽子、中性子の内部を見る--電子をぶつける

クォークの存在を発見--陽子、中性子の中の3つの粒

ハドロンを作るクォークの組み合わせ--バリオンとメソンの構成

6つのクォークとレプトン--どちらも6つずつ存在する

自然界に存在する4つの力--重力、電磁力、強い力、弱い力

力はどのように伝わるのか①--ゲージ粒子を交換する

力はどのように伝わるのか②--電磁力と強い力の伝わり方

力はどのように伝わるのか③--弱い力と重力の伝わり方

ウィークボソンの謎--他のゲージ粒子と異なる点



第4章 ゲージ対称性とゲージ理論

古典電磁気学の歩み--ゲージ理論を理解するために

電気と磁気の19世紀--ボルタからマクスウェルへ

「場」とは何か--近接作用論から生まれた概念

電場の対称性①--電場の大きさと方向を考える

電場の対称性②--電場は回転対称である

電荷の対称性--電荷は内部対称性が成り立つ

大局的対称性と局所的対称性①--「global」か「local」か

大局的対称性と局所的対称性②--風船を例にして比較すると

局所的対称性の特質、力の発生--理論に局所的対称性を要請する

マクスウェルの電磁理論とゲージ対称性①--2つの場が必要

マクスウェルの電磁理論とゲージ対称性②--局所的ゲージ対称性を持つ

場の古典論から場の量子論へ--マクロからミクロへ

光子の質量はなぜゼロか--電磁力は無限大まで到達する

ウィークボソンの質量は?--ゲージ理論への歩みは途絶えるのか



第5章 ヒッグスメカニズム

対称性の自発的破れを磁石から考える①--温度による棒磁石の変化

対称性の自発的破れを磁石から考える②--対称性は覆い隠されたにすぎない

宇宙の開闢へと時間をさかのぼる--ウィークボソンが質量を持っていた時代へ

素粒子の質量を表す単位--エネルギーの単位「eV」を使う

相転移によって対称性が破れる--水の相転移を例に考える

初期宇宙で起こった相転移--宇宙は高温、高エネルギーで誕生した

ヒッグスメカニズム①--ヒッグス粒子が真空に凝縮する

ヒッグスメカニズム②--ヒッグス粒子と相互作用する

3種の素粒子の自転--素粒子のスピンを調べる

電磁力と弱い力の統一--ワインバーグとサラムの登場

ワインバーグ?サラム理論--食べられたヒッグス粒子

ウィークボソンの存在と質量を予言--統一理論の巧妙な戦略

統一理論の検証へ--加速器の複合システム、SppS

陽子と反陽子を衝突させる--ウィークボソンの観測方法

ウィークボソンの発見--統一理論の予言と一致

ヒッグス粒子は現れるか--SppSでの実験と結果

電子―陽電子衝突型加速器の建設--より高いエネルギーを求めて

まだ姿を見せないヒッグス粒子--LEPの実験と結果



第6章 ヒッグス粒子を求めて

標準理論の弱点だったヒッグス粒子--予測できないヒッグス粒子の質量

衝突させる素粒子の組み合わせ--電子?陽電子と陽子?反陽子

荷電粒子は磁場中で回転する--巨大化する加速器

荷電粒子の加速には電場が必要--電場の向きを変える

電子?陽電子型の特徴--光の衣がエネルギーを減少させる

最先端技術を用いたLHC--強力な磁場を発生できる

陽子?陽電子型と陽子?陽子型の違い--ヒッグス粒子発見への情熱

LHCの加速の装置と流れ--複数の加速器で段階を経て加速

ヒッグス粒子の観測方法①--ヒッグス粒子はすぐに崩壊する

ヒッグス粒子の観測方法②--質量分布に現れるシグナル

100億倍の邪魔者--莫大なバックグラウンド

天を支える巨人、アトラス--日本グループが関わる検出器