書籍詳細

図解雑学シリーズ

行動経済学

筒井義郎 山根承子

サイズ・頁数 B6判・224頁
ISBNコード 978-4-8163-5155-6
価格(税込) 1,518円
発行日 2011.12.21

内容紹介

行動経済学は、経済学に心理学を重ね合わせた学問です。人間はなぜ、時として合理的ではなく感情に影響された経済行動をおこなうのか。面白い例を紹介しながら、人間の選択・行動の動機に迫ります。基礎理論をイラストや図版を使って数学なしで学ぶことができる画期的な入門書です。

目次

INTRODUCTION イントロダクション

●行動経済学とは?

●合理的人間と経済学とは?





第1章 自制心と心理会計



お歳暮に何を贈っていますか? 行動経済学がオススメする贈り物とは①

●高級すぎて手が出せないモノをもらうとなぜうれしいのか?

 行動経済学がオススメする贈り物とは②

●お金はどんな手段で手に入れても価値は同じか?

 人は合理的にお金を使っている?

●乗客が多いときになぜ早めに仕事を切り上げるのか?

 タクシードライバーの不思議な行動

●夕暮れのレースはなぜ大穴ねらいが多いのか?

 競馬場に集まる人々の不思議な行動

●タクシードライバー、ギャンブラーたちの行動から読み解く

 自制心は人生の成功の秘訣

●毎月の貯金がなかなか続かないのはなぜ?

 自制心をカバーするための工夫





第2章 認知と代表性



●久しぶりにあった昔の友人の顔を見分けられますか?

 人間はある特徴だけを選んで認識している

●ある事象をその特徴だけでとらえるのは危険?

 代表性が導く誤り

●では正しく推論するにはどうしたらよいか?

 ベイズの定理

●確率をなまじ知っていたために起こる誤り

 ギャンブラーも代表性でつまづく

●ある選手はなぜ立て続けにシュートを決められるのか

 ホットハンドは本当に存在する?

●提示した手掛かりに判断が引きずられてしまう

 アンカリング

●論理的には同じことなのに印象が違う

 フレーミング効果





第3章 利他性



●自分の利益だけを追求する「ジコチュウ」は悪いこと?

 利己性と社会の豊かさ

●寄付は偽善? それとも…

 なぜ人間は利他的行動をとるのか①

●「情けは人のためならず」が利他性の根拠?

 なぜ人間は利他的行動をとるのか②

●本来の利他性か擬似的利他性か見分けるには?

 究極ゲーム

●究極ゲームを実際に行ってみると結果は……?

 究極ゲームの結果

●公平性や利他性が本当にあるかを確かめるもう一つのゲーム

 独裁者ゲーム

●AさんとBさんが顔を合わさないとどうなる?

 利他性と助け合い

●道路など公共財を作るお金をどう集めるか?

 公共財供給ゲーム

●「人々は平等であるべき」という意識を誰もが持っている?

 他人との比較と不平等回避





第4章 危険回避と期待効用理論



●将来起きることは確定しているのか・いないのか?

 運命論的世界観と確率的世界観

●「だいたいこのくらい」だったら予測可能

 期待値と平均値

●平均値を予想に使うためのもう一つの条件

 分散と標準偏差

●不確実性の大きさを数字で表すと……

 リスク

●期待値無限大の賭けに100万円投資する?!

 サンクトペテルブルグのパラドックス

●とんでもなく低い確率でとんでもなく大きな利益をもたらす賭けは魅力的か?

 あなたはリスクを嫌う

●月給100万円の人は1万円の昇給を喜ぶか?

 限界効用逓減の法則

●人間は満足度(効用)を最大にする行動をとる

 期待効用理論

●期待値と分散を使って人間行動の原理を説明する

 平均?分散アプローチ

●危険回避は限界効用とどのような関係があるのか?

 危険回避と限界効用逓減

●ある事象がどのくらい起きやすいかがわからないときの行動は?

 エルスバーグのパラドックス

●エルスバーグの実験のどこがパラドックスなのか?

 あいまいさ回避





第5章 損失回避とプロスペクト理論



●5,000円の損失と5,000円の利得は同じインパクト?

 利得と損失は対称か

●損失と利得、どっちのほうが心にインパクトを与えるか?

 損失利得複合くじ

●利得や損失を測るときの元となる状態

 参照点

●参照点からの効用はどのように表すことができるのか

 価値関数 

●買い値のほうが高いのが当たり前?

 売り値と買い値は同じか

●現在の状態を維持しようとする性向

 現状維持バイアス

●なぜ現状維持バイアスがあるのか

 後悔回避

●客観的な確率と自分の信じている確率はどのように違うか

 確率関数

●ハズレのないくじに特別の価値を感じる

 確実性効果

●非常に小さな確率を大きく見積もる

 微小確率を大きく評価する

●期待効用仮説よりも人間の行動を精確に記述できる?

 プロスペクト理論





第6章 先延ばしと時間割引



●ダイエットや禁煙に成功しない理由を経済学的に考えると?

 自己抑制ができないわけ

●1年後 1万円もらえるのといま1万円もらえるのとどっちがよい?

 時間割引

●時間割引率が一定の場合はどっちを選ぶ?

 指数割引

●時間割引率が時間とともに高くなる場合はどっちを選ぶ?

 双曲割引

●近い将来になるほど待てなくなる

 人間も動物も双曲割引がふつう

●時間割引に関する経済実験をしてみてわかったこと

 準双曲割引

●報酬を受け取る時点以外にも割引率を変化させる要因がある

 金額効果と期間効果

●どうしたら時間非整合性の問題をクリアーできるか?

 コミットメント

●なぜ時間割引率は期間や金額などの条件に依存するのか?

 割引率アノマリーの原因





第7章 経済学とはどんな学問か?



●経済学とはどんな学問なのか?

 根本にある「経世済民」という考え

●経済学はどのように発展してきたか?

 科学としての経済学

●20世紀最大の経済学者によって打ち立てられた新理論

 ケインズ経済学

●常に合理的な予想を立てて効用を最大化する行動を前提にすると?

 ケインズから合理的期待へ

●経済学が前提するスーパー(?)人間

 ホモエコノミカス(合理的経済人)

●ホモエコノミカスは完全合理性、現実の人間は?

 合理性とは?

●個々の生き物にも見られる合理的行動とは?

 原虫の合理性

●将来の株価はまったく予測不可能という理屈とは?

 効率市場仮説





第8章 なぜ今、行動経済学か?



●改めて考える 経済学とはどんな学問なのか?

 新しいマクロ経済学が描くバラ色社会

●合理性を前提としないほうが現実をうまく説明できるのか?

 行動経済学は人間の合理性を否定していない

●人間は経済学が前提とするほど合理的ではない

 行動経済学の真の目的とは?

●経済学を書き換える作業はここから始まった

 株価のアノマリー

●株価のアノマリーを説明する研究分野

 マーケットマイクロストラクチャー

●人間はそもそも非合理という前提から始める

 行動ファイナンス

●人間の非合理な側面を新しいマクロ経済学に組み入れる

 行動マクロ経済学

●政府がお金をばらまいても景気は回復しない?

 財政政策の有効性

●物価動向を気にせず名目の賃金額を気にする

 貨幣錯覚

●人間の非合理性を経済学に組み込む

 行動経済学の将来





第9章 幸福の経済学



●幸福を実現するための道筋を考えるには何を分析すればよいか?

 主観的幸福感

●なぜこれまで主観的幸福感を研究対象にならなかったのか?

 序数効用と基数効用

●経済学でいう「最も望ましい状態(全員が幸せな状態)」とは?

 パレート最適と効率性

●主観的幸福感を分析に使うことはできないのか?

 幸福の経済学の目標

●生物学的な要因? それとも社会的な要因?

 女性のほうが幸福

●GDPの上昇にもかかわらず幸福度が上がらない

 幸福のパラドックス

●幸福のパラドックスを説明する仮説

 相対所得仮説

●幸福のパラドックスを説明するもう一つの仮説

 順応仮説

●結局のところ、どうすればわたしたちは幸せになれるのか?

 幸福のパラドックスが示唆すること

●幸福のパラドックスは他の国でも見られるか?

 主観的幸福感の国際比較

●経済学はどっちを目標とすべきか?

 主観的幸福感と効用





第10章 行動経済学は何に役立つか?



●仕事に応用すれば一攫千金も夢じゃない?

 行動のくせを使って儲けよう

●危険回避の性向を利用してお金を儲ける

 保険は儲かる?

●小さなリスクに対して愛好的という性向を利用する

 ギャンブルは儲かる?

●パック旅行、定額料金制、故障の保証制度の損得は?

 損失の合計記帳

●ギャンブルにのめり込みやすい雰囲気を作るのはOK?

 認知バイアスを使った商売の道徳上の問題

●非合理的な性向を自覚すれば詐欺に引っかからない?

 人間の性向は教育や努力で変えられるか

●非合理な性格が原因で起こる困った事態から身を守るには?

 コミットメントと規制

●弱者保護の規制を経済学者は賛同しない?

 政府は合理的か?

●個人の意思決定に他人が介入するのは好ましいかどうか?

 ナッジ(デフォルトの設計)